それを見ると、昌浩は鼓動が高鳴りだすのを抑えることができなかった。
もちろん、これは彼にとってとても失礼なことだとわかっている。この気持ちを伝えたら、彼はぷいと顔をそらし、肩をぷりぷりと怒らせて、しばらくは帰ってきてくれないだろう。その様は容易に想像がつく。だからけっしてしてはならないと自分自身を戒めているし、彼が無防備に横たわっているのを見るたびに眼前の光景から視線を逸らしている。だが、これはかなり苦痛を伴うのだ。
ぴくぴくと震える長く白い耳。
夢を見ているのか、顔を洗うようにくしくしと動く前足。
そして、緩やかに上下するふかふかのおなか。
変な動悸や息切れがしそうになるのを理性で抑えこみ、気持ちよさそうに仰向けで寝ている物の怪の白いおなかをわしゃわしゃするという野望を、昌浩は今日も打ち砕くのだった。